Creator製作者の想い

堺市 月蔵寺日月園 Under the Moon

人がたくさん集まってくるような墓苑を作りたい

屋根になってもいけないし、建物になってもいけない、
といってまったくのオブジェになってもいけない難しい注文

固定概念を覆す斬新な墓苑

明応4年(1495)年に創建された、日蓮宗の古刹「月蔵寺」。寂しく、暗いイメージだった墓地を自然いっぱいの明るい合祀墓にリニューアルしました。デザインは空間デザインで著名なInfixの間宮吉彦さんが手がけ、造園設計は国内外のグリーンディスプレイを行っている和想デザインWASO-design、全体照明計画は数々の作品を生み出しているLEM空間工房が担当。企画から3年半で、樹木に囲まれ、大きな月のモニュメントが屋根になったくつろぎの空間が誕生しました。お参りや法要はもちろん、コンサートなど多彩なイベントも不定期に開催しています。大きな水盤には水が絶えず流れており、水面に映る満月やライトアップされた木々が幻想的な雰囲気を醸し出しています。

月蔵寺 様

仕事帰りにちょっとお参りしていこうかなと、
気軽に思っていただけるようなお墓になったのではないかと自負しています。

明るい笑い声の絶えないお墓に

元々この場所は別の寺院の墓地だったんです。時代の流れとともに廃寺になってしまい、お墓だけが残りました。当時は檀家さんが3人で管理されていたのですが、高齢になられたり、遠方にお住まいになっておられて、管理が出来ないということから、ご縁あって供養させてもらうことになったんです。

近年よく、墓じまいとか無縁さんという言葉を聞きます。私はその言葉があまり好きではなく、明るい合祀墓を作りたいという思いを常々持っていました。寂しい、孤独、暗いという通常のお墓のイメージから脱却して、常に人が訪れ、笑い声の絶えないお墓。そんなお墓にしたいなと自分のイメージが固まった頃、空間デザインの第一線で活躍されている Infix の間宮吉彦さんと出会ったんです。

月蔵寺住職 金山信利 様

月蔵寺住職 金山信利 様

自然と調和した「月型の屋根」

間宮さんには、いつも音楽や笑い声があるような場所にしたいことだけをお伝えしました。設計の中で特に間宮さんがこだわられたのが、北海さんに作っていただいた屋根の部分にあたる「月型の屋根」。他の部分はかなり最初の設計段階から大幅に変更があったのですが、この「月型の屋根」だけは当初の設計通りで、ここを基軸にいろいろなものを考えていきました。

工事が着工してしばらくは、今まであるものが変わっていくことに、少し寂しさもありました。けれど、「月型の屋根」が入ってからは自分自身のテンションも急上昇。周囲の景色とも調和して、お参りにいらした方がゆっくりと出来る、本当に素晴らしい場所になったと大満足しています。この大きな水盤は水を止めると、イベントスペースにもなるんです。法要はもちろんのこと、ギャラリーやコンサートなどたくさんの人に来ていただけるような場所にしたいと構想を練っています。

自然と調和した「月シェルター」
月蔵寺 金山順子 様

月蔵寺 金山順子 様

夜は幻想的な空間に

ここは20時までお参りできるようにしています。夜はこの大きな水面に月が映ったり、植栽がライトアップされて幻想的な雰囲気に包まれます。

お墓は夜に参るものではないと一般的に言われていますが、現在の生活スタイルは昔とは違っているので、お墓もお寺も変わらないとダメ。檀家さんも今の私の考えに賛同してくださり、本当に力になってくださいました。仕事帰りにちょっとお参りしていこうかなと気軽に思っていただけるようなお墓になったのではないかと自負しています。

夜は幻想的な空間に

「日月園」の名前の由来は?

私どもの寺は豊臣方の武将、大阪夏の陣で主君の命を受けて堺に火を放った大野道犬斎治胤と、ほとんど壊滅状態となった堺の町を、碁盤の目状に町割りして復興させた風間六右衛門尉道喜という二人の人物とゆかりがあります。片一方は火を放ち、もう一方は復興という、相反するものを受け入れてきた寺ということもあり、「日月園」と命名しました。象徴となっている「月型の屋根」も名前にちなんで誕生しました。

間宮吉彦 氏(空間デザイナー)

建物のようなモニュメントは立てず、
象徴的なものを主体として作ろうと思っていました。
それが北海さんにお願いした「月型の屋根」です。

新旧のバランスを意識

月蔵寺さんに「人がたくさん集まってくるような墓苑を作りたい」を頼まれたときに感じたのは、デザインという領域が近年とても広がっているなということ。商業施設、住宅、公共の場以外に昨年度もオリジナル仏壇の依頼があり、新しい試みが増えていっているなと感じます。

株式会社インフィクス 間宮吉彦 氏

株式会社インフィクス 間宮吉彦 氏

月蔵寺さんは歴史ある寺院で、大きなイチョウの木など、もちろん良いところはそのまま残しました。ただ、それだと単に修復しただけで、誰も目を向けません。たくさんの人に来ていただく墓苑にするためには、空間をいかに新しいものにするかが重要でした。斬新にしすぎると違和感が出てしまうので、周囲の景色と調和させつつ、新しいものと古いものとのバランスには注力しましたね。

また、隣に民家が隣接しているなど、限られたスペースでどう作っていくか苦心しましたが、水を止めるとイベントスペースになる大きな水盤を作ったことで、懸念点も解消出来たかなと思っています。水盤は単に水を流しているのではなく、水郷をイメージしています。ライトアップすると樹木が映り込み、とても幻想的。夜のお墓参りに行きたくなるような仕上がりになったと思います。

新旧のバランスを意識

想像以上の出来映えだった「月型の屋根」

今回の主役はお墓。建物のようなモニュメントは立てず、象徴的なものを主体として作ろうと思っていました。それが北海さんにお願いした「月型の屋根」です。北海さんにはある程度の図面は書きましたが、月蔵寺さんの想いをざっくり書き出した大雑把なものしか渡していないんです。

屋根になってもいけないし、建物になってもいけない、といってまったくのオブジェになってもダメとすごく難しい注文だったと思います。けれど、北海さんが快く引き受けてくださり、僕の思い通りのものをカタチにして提供してくれました。北海さんは長年一緒に仕事をさせてもらっているのですが、いつもクオリティ以上のものを作ってくれる安心感があり、本当のプロフェッショナルだなと信頼しています。

月シェルター

角度や素材で空間をデザイン

「月型の屋根」はまっすぐに置いてしまうと、下から見たとき月のカタチが分からない。どの角度から見ても月だと認識できるよう、設置角度もかなり意識しました。角度がついているので、雨もちゃんと流れるんですよ。「月型の屋根」の見た目が重たいイメージなので、柱は柔らかく見えるようフォルムも丸みをつけ、光沢のある素材を選びました。

これからの時代、生前にお墓を自分で選ぶ人が増えてくるのではないでしょうか。その先駆けをいく、面白い仕掛けができたなと思っています。

建築概要

デザイン監修:infix
ランドスケープ:WA-SO design
照明計画:株式会社LEM空間工房
構造:鉄骨造
仕上:OMZP鍍金+ステンレス バイブレーション スーパーブラック発色
規模:H3m W10m D10m

月蔵寺

開創1495年。以来524年(平成30年)の歴史を有する寺院。
堺市指定文化財『寺宝釈迦涅槃図』豊臣方武将大野道犬斎治胤の慰霊塔地割奉行風間六右衛門の墓所。

月蔵寺 http://www.gatsuzouji.or.jp

間宮吉彦 空間デザイナー

全国で飲食、物販などの商業施設の空間デザインをはじめ、あらゆるジャンルのインテリアから建築まで空間をトータルに手がける。特定の様式や主義にとらわれることなく、時代の欲するムードを表現し、その中に潜む普遍性を追求する。

1958年 大阪生まれ。1989年(株)インフィクス設立
大阪芸術大学デザイン学科教授
九州大学 芸術工学部 講師

株式会社インフィクス
http://www.infix-design.com/

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